訪問介護における監査

簡易的な監査(と言っても書面の現物確認)であるが、ようやく終わった。監査とは何のためにやるのか。国民の払う介護保険料や税金を使って行う事業のため適切に事業が行われているかが問われるわけである。簡単に言えば、計画➡︎実行➡︎見直し➡︎実行というPDCAがサイクリックに行われているかだ。 監査への対応は内容如何はもとより形式的に監査人が見やすいように書類を並べておくのが良い。今回は監査項目に従って、何番の書類を見せて下さい、というように次々と要求された。 事業の運営状況に重点が置かれる。先ずはご利用者との関係。契約時に重要事項を説明しているか、契約書は本人または代理人が署名または記名捺印しているか、また個人情報保護に関する説明書は手交されているか、などである。ここまではどんなビジネスでも共通であろう。契約後、ケアマネが作成するケアプランにもとづき訪問介護計画書が作成されているか、その内容をご利用者が納得し署名しているか等も問われる。

ご利用者からの苦情受付体制、苦情解決事例の現物記録も提出対象である。 実際の介護の専門的内容については、各サービスに関わるマニュアルの有無およびそれらについて研修がなされたかが問われる。さらには介護の方法についてご利用者の家族に教えてあげているかという項目もある。独居のご利用者は別にしてご家族がいれば相談にのったり、介護方法を教えてあげることは間々あることだが、それをいちいち記録に残しているかといったら、なかなか残せるものではない。最近は関係者間でメールでやりとりする事が多いので、その記録をプリントアウトして証跡にしたりする。 あと重要なのは何と言っても介護記録である。あるご利用者は、「ヘルパーさん来ても記録を書くのに随分時間とって実際の仕事の時間が削られている。」と苦情を言う。もっともだが、そもそも介護記録にご利用者の印鑑があって初めて本当に計画どおりの介護をしたということになり、事業所は公費を請求できるわけである。しかし記録を書くのに多くの時間を取られるのは本末転倒なので当事業所ではなるべくヘルパーの負担にならないよう記録用紙は独自に作成している。ご利用者ごとに書式が異なる。一見作業の標準化に反するようだがこれが一番合理的で、省力化につながる。 一般に記録表にはご利用者の当日の状況を書く欄がある。これは、次に他のヘルパーが訪問した時に、引継ぎになる役割も果たしている。しかし、ご利用者は概していつも状況が変わらないことがほとんどで(変わったら困る)毎回書くことなどない。またご利用者によっては書かれた内容(記録表控え)を丹念に読み、気分を害することもある。そこで当事業所では、いつもどおり、やや不調、大変不調の三段階の選択方式にして、「不調でご機嫌悪い」等、その他の特記事項は直接メールで事業所宛送るようにしている。その事によっては場合によっては迅速に手が打てる。 介護記録表の説明に行数を割いたが、それ以外は、研修の実施記録が揃っているか、ケアマネ、行政等に相談、報告した記録はあるかなどの証跡を見られる。 PDCAのチェックの部分、すなわち現状のサービスの効果測定、見直しの記録も重要な監査対象だ。

何はともあれ、何で記録(電子データで良い)に残す習慣をつけることである。実際問題、訪問介護は業界では関係者が外にいる時間の方が長いので、いちいち電話などで仕事を中断されたくない。従って、メール、ファックス、など文書でやりとりすれば、時間を超えて連絡できる、内容が正確に伝わる、記録が後に残る、延いては監査対策にもなるということである。最近はスマホの普及で文字を電子化する時間が極めて短縮された。活用したい。