訪問介護のご利用者と介護施設巡り

ご家族とご利用者に入っていただく施設を見て回る案内をする仕事がある。不動産屋さんみたいであるが、我々は見学先の施設のことは全く知らないので、ただお連れするだけである。ご利用者とご家族は施設で説明を聞き、見学して帰る。

あるご利用者親子の話。お父様が認知症で要介護3。認知症といってもいろいろレベルがあるが、一見穏やかでそれなりに話も通じる。もっとも、家の中での状態は皆目窺い知れない。特養ご希望でもう5、6件は見て回っただろうか。パンフレットを取り寄せ、内容を研究しアポイントを取って当日訪問する。2時間くらい説明を聞いたり、中を見学したりで帰ってくる。

帰りの車中でどうだったか私もいろいろお話を聞く事になる。

要介護3は特養の入所要件は充足しているが、どこも数百人待ちというのは変わらない。費用もいろいろだ。要は部屋代の部分が自由に設定されているのでそこで差が出る。

高い施設は特養と言えども待ち人数は少ないし空いているところすらある。

またご家族の家との距離も問題だ。こういう施設はだいたい不便なところにある。クルマを持っていないとそうそう簡単には訪問出来ないような立地条件にある。

もう一つ、現在在住の市町村の人優先というところが多く、施設の少ない市町村に住んでいる方は隣の市町村の施設を希望しても他市の枠が限られ、これまた、競争率が上がる。

見学終了後は毎回ため息をつきながらの帰途である。

さらに追い討ちをかけるような昨日の出来事。ご家族とお父様と3人で10キロメートル程離れた施設見学を、昨年からアポイントとり、予定してあったので出発。出発と同時にご家族は先方施設に電話を入れ、今から行く事を連絡した。電話を取り次いだ女性が、どうぞお待ちしております、との返事。予定通り訪問した。

玄関でお二人をおいて私はとりあえず、事務所へ戻る途中、ご家族から電話が入った。

「インフルエンザが流行ったので見学は出来ないと言われた。」と。何⁈ 私はすぐに施設に引き返し、一緒に事情を聞いた。管理者を含めて男性職員3名が応対し、インフルエンザの人が出たのでとにかく外部の人は中に入れないとの一点張り。

遠方から費用と時間かけて来ているのに、事前連絡がないのはおかしい、出発前にも電話を入れたはず。ご家族は猛烈に抗議。認知症のお父様も筋の通った不満を言われていた。

私は、そのご家族が万一将来そこの施設をご利用することもなきにしもあらずと思い、穏便にも辛辣に加勢した。結局私は、もう仕方ないから帰りましょう。私が市町村に苦情を申し立てます。見学のための費用も請求しますから、と言って帰ってきた。

要は職員同士の連携が取れていないのだ。ご家族もこういう体質の施設には親を預けられないと憤慨し、また交通渋滞の中、家に帰ってきた。そのご利用者のケアマネさんも呆れるばかり。包括支援センターへ報告しておくとのこと。何とも後味の悪い見学ツアーであった。